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札幌家庭裁判所 平成元年(少)1715号 決定 1989年7月11日

少年 T・Y(昭46.7.28生)

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(非行事実・適用法条)

司法警察員作成の平成元年6月18日付少年事件送致書の犯罪事実及び罰条の記載を引用する。

(処遇等)

少年は、5歳のころから家の金銭の持ち出し、小学校2年生のころからいわゆる車上狙い、万引き等をするようになり、昭和63年7月26日には、当裁判所において、窃盗の事実により保護観察決定を受けたにもかかわらず、同年8月に3件の窃盗を犯し、さらに本件窃盗を犯したものである。

少年は、平成元年1月、精薄Bの認定を受けた軽度の精神薄弱であるが、自己の能力が劣っているとの認識がなく、昭和62年10月ころ高等養護学校を中途退学したり、平成元年1月には両親が勧める精薄者施設への入所を拒否して家出している。少年は、通常の能力がある者と同様に稼働して生活しようと試みているが、能力が低いこともあって転職・徒遊を繰り返していた。これと前記のような幼少時の窃盗歴とを考え併せると、少年は、既に健全な稼働意欲を失っており、かつ、規範意識を欠き、盗癖を有するに至っていると認めざるを得ない。

少年の保護者は、少年を精薄者施設へ入所させようと努力するなど監護意欲を有しているが、既に少年が保護者の指導に従わなくなっており、その監護について自信を失っている。

そうすると、少年については、これまで適切な教育が施されていないことをも考慮し、中等少年院における特殊教育を受けさせて社会性を身に付けさせるのが相当である。

よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して、主文のとおり決定する。

なお、少年の非行の原因が精神薄弱にあることに鑑み、本決定とは別途、札幌保護観察所長に対し、少年の出院後の福祉的措置に関する環境調整命令を発することとした。

(裁判官 高橋文清)

〔参考1〕環境調整命令

平成元年7月25日

札幌保護観察所長 殿

札幌家庭裁判所

裁判官 高橋文清

少年の環境調整に関する措置について

当裁判所は、平成元年7月11日、下記少年について、別添決定書謄本のとおり中等少年院送致決定を致しました(当庁平成元年(少)第1715号窃盗保護事件)。少年については、少年院出院後における福祉的措置が不可欠であると考えますので、適切な措置が行われるよう、少年法24条2項、少年審判規則39条に基づいて、下記のとおり要請致します。

第1少年

氏名 T・R

昭和46年7月28日生

本籍 札幌市○○×条×丁目××番地××

神奈川医療少年院在院中

第2環境調整に関する措置

札幌保護観察所長は、少年の保護者及び関係各機関と協力のうえ、

1 少年が少年院を出院するに際し、引き続いて少年を収容、保護できるような福祉施設を確保し、

2 仮に、上記のような収容施設がない場合には、少年に対する専門家による継続的な教育、指導がされるような機関を斡旋し

て下さい。

第3上記措置の必要性

少年は、精薄Bの認定を受けた精神薄弱者であるが、自己の能力が劣っているとの認識に欠け、平成元年1月には、保護者の勧める精薄者施設への入所を拒否して家出したりしている。また、少年は、通常の能力がある者と同様の生活をしようと試みているが、能力の問題などから、転職・徒遊を繰り返している。そして、前記中等少年院送致決定にかかる非行だけでなく、少年の前歴は、いずれも少年が精神薄弱であることにその基本的原因があるものと考えられる。

もっとも、少年は、少年なりに稼働する必要を感じて稼働の努力をしている面もあり、その能力にはなお開発の余地があるものと認められる。

しかし、少年は、これまで適切な教育をほとんど受けておらず、そのためもあって、その規範意識の欠如には根深いものがある。したがって、少年が将来安定した社会生活を送れるようになるためには、少年院での教育だけでなく、出院後も継続的に教育的な働き掛けがなされる必要があるというべきである。

なお、少年の保護者は、少年が精神薄弱であることに鑑みて、精薄者施設を利用することを考えるなど、監護意欲を強く有している。しかし、現在は、少年が保護者の監護を拒否し、保護者としても、少年の能力に対する衰れみから、少年を強力に指導しきれず、専門家の援助を求めている状態である。

以上のとおりであるから、少年のためには、前記のような福祉的措置が不可欠である。

なお、詳細は、別添の札幌鑑別所長作成昭和63年7月22日付及び平成元年7月5日付各鑑別結果通知書並びに当庁家庭裁判所調査官○○作成平成元年7月10日付少年調査票の写しをそれぞれ参照して下さい。

〔参考2〕司法警察員作成の少年事件送致書記載の罪名、罰条及び非行事実

(1) 罪名、罰条

窃盗、刑法235条

(2) 非行事実

被疑者は、平成元年6月16日午後3時10分ころ札幌市○区○○××番地×パチンコ○○内において、遊戯中のAがズボンの左後ろポケットから床上に落とした同人所有の現金42,315円およびテレホンカード2枚在中の財布1個(時価合計5,000円相当)を窃取したものである。

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